1. 研究目的
 ミズクラゲの初期生活段階であるポリプの成長・増殖がクラゲの大量発生に大きく関連していることから、ポリプの付着や増殖を制御する化学的・微生物学的技術を開発する。生物学的制御に関しては、ポリプのみならずクラゲに対する天敵生物を探索し、両者を有効利用したミズクラゲの制御方法の開発を目指す。また、ミズクラゲと競合関係にある魚類との生態学的相互関連性についても解明し、捕食者の存在がミズクラゲ発生量に与える影響をモデル化する。また環境要因を基にしたモデルから、ミズクラゲの発生予測を行う。さらに、クラゲを物理的に駆除するクラゲカッターの効果についても検証する。

2. 最終目標
(1) ミズクラゲポリプの付着・成長・増殖を制御する化学的・微生物学的・生物学的技術を開発する。

(2) ミズクラゲの発生量を天敵によって制御する生物学的技術、またクラゲカッター等によって制御する技術を開発する。

(3) 魚類等の捕食者の共存や特定環境要因がミズクラゲ現存量に与える影響を評価し、予測モデルを構築する。
  (1) ミズクラゲの発生機構の解明
  (2) ミズクラゲの発生予測・制御技術の開発
1. 研究目的
 ミズクラゲの発生が恒常化している東京湾、伊勢湾、瀬戸内海等をモデル水域として、飼育実験、現場環境及び既往データの解析等により、大発生に関わる生態的特長、及び物理化学的環境要因、プランクトン等の餌環境、魚類資源との量的関係変化の影響等を把握し、各海域の環境変化や食物連鎖構造変化から大発生に至るまでの機構を解明する。

2. 最終目標
(1) 東京湾、伊勢湾、瀬戸内海等のモデル水域におけるミズクラゲの発生量と気象、物理化学的環境要因との関係を解明する。

(2) ミズクラゲの量的変動と食物連鎖構造の相互関係を解明する。

(3) 各海域の環境変化や食物連鎖構造の変化から、大発生に至るまでの機構を解明する。
 
3. 研究内容
(1) ミズクラゲポリプの付着・成長・増殖制御
 ポリプの付着や増殖に影響を与える化学的・微生物学的な因子の解析を行い、忌避化学物質の探索、市販の防汚塗料などに対する効果、付着阻害効果のある最近の分離と阻害物質の抽出等により、ポリプの付着・成長・増殖に関する制御方法を開発する。また、天敵生物によるポリプの捕食制御効果と影響について検討し、応用技術開発を目指す。

(2) ミズクラゲの発生量の制御
 ミズクラゲの天敵生物を探索し、それらの有効利用により、ミズクラゲの発生量を制御する方法を開発する。同時に天敵生物が天然海域より消失した原因について特定する。さらにクラゲカッターを用いたミズクラゲの発生制御効果を検証する。

(3) ミズクラゲ発生量変動予測モデルの構築
 ミズクラゲと競合関係にある魚類等との生態学的相互関係やミズクラゲの発生に特徴的な環境要因について検討し、ミズクラゲの発生量の変動を予測できるモデルを開発し、妥当性について検討する。
3. 研究内容
(1) 大型クラゲの生理・生態的特性と物理化学的要因の関係の解明
 生活史初期のポリプ期の無性生殖過程、ポドシストの耐久性および幼若クラゲ〜成体期の成長、食性を飼育実験や野外調査により把握する。中国沿岸の環境要因やミズクラゲで得られた知見を利用し、大量発生を引き起こす主原因を明らかにする。

(2) 大型クラゲの繁殖生態の解明
 日本海でポリプの自然着生が起こるかどうか、採苗器による野外調査や飼育実験により明らかにする。生殖巣の成熟、産卵、受精を人工的に促進し、有性生殖過程の繁殖技術を確立すると共に、天然での成熟実態を把握する。生殖過程に与える環境要因の影響を調べることにより、定着制御に関する発生規模の予測技術の開発を図る。

(3) 大型クラゲに対する生物相互関係の解明
 潜水観察により大型クラゲ成体に蝟集する魚類群集を調査し、カワハギ等の飼育からクラゲへの捕食、被食の実態を明らかにする。また、ポリプ〜幼若クラゲの天敵生物を特定し、捕食能力を実験的に測定する。これらの結果や、生理・生態特性を利用し、発生制御技術を検討する。
1. 研究目的
 ミズクラゲで得られた知見を基に、大型クラゲ(ここではエチゼンクラゲを指す)についても野外調査や飼育実験等を通じた特性の比較から、本種の大発生に関わる要因の抽出等を行い、大型クラゲの発生予測・制御技術について検討する。

2. 最終目標
(1) 大型クラゲの生理・生態的特性を、無性生殖を行うポリプ期からその後の成体に至るまでの各生活史段階で把握し、物理化学的環境要因および海洋生態系の変化との関係から、大量発生引き起こす主原因を明らかにする。

(2) 大型クラゲの有性生殖過程、即ち生殖腺成熟、産卵等の繁殖生態を明らかにし、発生規模や日本近海への定着についての予測、並びに定着制御に関する技術の開発を行う。

(3) 大型クラゲに対する魚類との相互関係、天敵生物による捕食を明らかにし、発生制御技術を開発する。
3. 研究内容
(1) ミズクラゲ発生機構の解明と環境要因の影響の解明
 東京湾、伊勢湾、瀬戸内海等をモデル水域として、現場観測により季節ごとのミズクラゲの現存量、成長、水平分布、集群形成等の生態的特長を明らかにする。特に、ポリプ期における耐性や無性生殖過程の特性を把握する。ミズクラゲの発生量と生残率を推定し、気候、海洋条件や、物理化学的環境要因との関係を明らかにする。

(2) ミズクラゲ発生機構と食物連鎖構造の関係の解明
 ミズクラゲの食性とプランクトン組成の変化を調査し、ミズクラゲ増加と食物連鎖構造変化の相互関係を解明する。特に、ミズクラゲの生存、成長に及ぼす微小動物プランクトンの機能を解明する。また、ミズクラゲと、主要魚種であるイカナゴ、カタクチイワシ等との量的関係、餌の動物プランクトンを巡る競合関係を把握する。

(3) ミズクラゲ発生量の長期変動と海域の環境変化の関係の解明
 モデル水域における既往データの解析、遡及的調査により、ミズクラゲ発生量の年変動、長期的増加傾向と、海域の環境変化との関係を把握する。
  (3) 大型クラゲの発生予測・制御技術の検討