魚種交替は古くから知られる現象でしたが、1980年代に気象のレジームシフトとの関連や、遠く離れた海域における魚種交替の同期が示され、海洋物理構造の変化に伴う、生態系遷移現象であることが示唆されました。これらの結果は、魚種交替現象を理解するためには、魚類に関する研究だけでなく、気象・海洋物理の変化が海洋生態系・魚類の生理生態を変化させて魚種交替に至る過程を、統合的に取り扱う必要がある事を示しています。しかしながら、従来の魚種交替研究は、魚種交替現象と気象や海洋物理環境の変化の相関関係を探るに滞まり、気象・海洋物理変化が魚種交替現象を引き起こすメカニズムに関しては不明のままです。
特に、生態系遷移を引き起こす海洋物理環境が生じる要因、魚類の餌生物となるプランクトンの生物量・生産量・群集構造の変化、海洋物理環境・低次生態系の変化がそれぞれの魚種の生理生態や、魚種間の優劣関係へ与える影響についての理解は乏しく、魚種交替現象の予測にとっての重大な障壁となっています。 魚種交替現象は、自然の環境変動に対する海洋生態系の応答であり、その人為的な制御は不可能です。しかし、魚種交替のメカニズムが解明され、生態系モデル等によってその予測技術が開発されれば、魚種交替の社会経済的要因を前提とした、持続的資源利用と漁家経営の安定化手法への提言が可能となります。
 このように、「魚種交替現象の予測・利用技術の開発」のためには、魚類に関する研究だけでなく、気象・海洋物理の変化が海洋生態系・魚類の変化、そして魚種交替に至る過程を統合的に取り扱うとともに、その自然科学研究の成果を用いた、社会科学的研究を合わせて行う必要があります